シーン#1 シーン#2

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SENSE of Wonder ―ありふれたマテリアルのもうひとつの様相―
2013年12月6日(金)- 12月18日(水)
での出品

宣言文(パンフレット記載)

わたしはザリガニ、あるいは亀。つぶらで真っ黒な目には大した表情はなく、メッセージをこっちに伝えるわけでもないが、それに映り込む風景や時間はなにやらスケッチをすべきモチーフのようにも感ぜられる それは鏡に向かって対話でもするような気分、奴らに餌などを与えながら、もぞもぞ動く連中を尻目に、傍らにあるクロッキー帳のスケッチは書き進められていった。
一つの風景のエピソードが出来上がったわけである。

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シーン#1
2013.12
キャンバス 飼育ケース 木材 ザリガニ 他
サイズ 可変

キャンバスに書かれた文章
—–

なあ、あんた、俺たち… 閉じ込められたよな
あぁ 完全に閉じ込められたようだ、、
しかし、、なんだこの物質は…?周囲に透明な壁が張り巡らされてる……
こんなものは見たことがないぞ……。
あぁ、、これだと脱出は不可能だな、、。
外はなんだ?これは?家か?家の中なのか?
あぁ……。

ずっとここで暮らすのなんていやだぞ!そんなの
思えば、、そうだあのとき、平日によくわからない男が、用水路で日光浴してる俺を、乱暴にすくったんだ、、
乱暴されたんだよ……。
あの野郎、、平日にザリガニすくってるなんて、、絶対まともな仕事してないだろ、あいつ……。

シゴト?ヘイジツ?なんだシゴトって?

お前ひょっとして養殖物か……?世間知らなそうだな
あぁ ご名答。養殖物だ、だからそれほど今のいごこちは悪くはないんだけど、、。
自分で餌もとったことないのか?
そうだよ。悪いか?でも、そんなこと今話すことじゃないだろう。

あ、じゃあセックスしたことないだろう?
し、したことありまふ  関係ないでしょ今それ


でもなぁ、ずっとここで二人だけで暮らすのか俺たち?
そう、なるよなぁ。

そうなるよなぁってさあ、、
お前、あきらめるの早くないか?やっぱ養殖物はそういうもんなのかねぇ、、

そのさあ、養殖物ってのやめろよ、、気分悪いんだけど、、
だいたいお前は脱出できると思うわけ?この状況で

いや、そりゃあ今は思いつかないけど 態度の問題の話してるわけ俺は
お前のそのでっかいハサミはなんの為についてんだよってことだよ
牙の取れたオオカミは犬にしかなれないんだよ!

ザリガニでも犬になれんのか、、?

そういう話じゃねえよ!

俺犬になんかなりたくないんだけど…

だから喩えだよ!

……
難しすぎるだろ!

難しくねえよ!

オオカミは養殖しねえだろ!

そこじゃねえよ!

わかったよ!
わかってねえよ!



お前、けっこうノリいいんだな…
え?そうかな…

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シーン#2
2013.12
キャンバス 飼育ケース 木材 亀 他
サイズ 可変

キャンバスに書かれた文章
—–
ふふ、惨めな顔してる
私が馬になるってあなたに話したとき
あなたは現実から目を背けちゃいけないよと笑ったわ
でも、今の私の姿を見ても、またあなたは 笑えるのかしら、
え? 亀? なに言ってるの?あなた
あのとき、私は美術館で監視の仕事をしていたわね…
そう、首を引っ込めて、背中を丸めて、

まるで亀みたいになって!

自分に対して自信もなかったし、楽しみなんていったら週末に好きな本を読むくらい…
でもね、今は違う、こんなに優美な脚、この毛並みの艶も見て!ほんとに私
美しい白馬になったわ!

あなたはまだ人間のつまらないルーティンを
抱えて、職場の人間関係、朝の満員電車、ふふ、満員電車だって
懐かしい言葉だわ
そしてそして、職場の上司との付き合いで
ガード下の居酒屋なんかで首を引っ込めて、背中を丸めて
また、コップ酒なんかを飲んでるんでしょう?

まるで亀みたいになって!

私はね
朝は、稜線から上がる朝日の暖かさを感じて
ゆっくりと目を覚ますの。
それだって人間からしたらすごく朝の早い時間なのよ、
でもね、それはとてもとてもゆっくりとした時間の流れなの。
そしてお腹がすいたら草原の草を少しだけ食べるのよ
それで、気が向いたら尾根から吹き抜ける風と一緒に仲間たちと駈けるの、

まるで亀みたいになって!

すごくシンプルなのよ、
でもいろいろが、目に映るディテールの全てがね、輝いているの、。
ほんとうに良かったわ、こうなって。人生にはね
どこかで思い切らなくちゃいけないときがあるのよ
あなたには、それが出来なかった、。
まるで亀みたいになって、
それだけのことよ
でもいいと思う。
それも、。
首を引っ込めて背中を丸めて
そんな人生も楽しいものね
……