戻った海では猫が巨大な区画に拾ったであろうワカメを敷き詰めていた
せっかくの海岸が台無しだ
真っ黒じゃないか、
異様なモノリスのように海岸に真っ黒の区画が敷かれる
磯臭い。
作業を続ける猫に話しかける
猫は新興国での来るべき日本食ブームに合わせワカメの生産会社を築くつもりであること、ワカメは水を吸わせると増え続ける完全な食材であること、そして、22匹目の羊が何匹も周回する間そのようにワカメは増え続け、猫の貿易は利潤を産み続けることを滔々と語った
いろいろ間違えている、ワカメは増えてなんかいない、水を吸ってふやけているだけだ。それにこいつはそもそもそういうキャラクターでもなかった筈だ、私は呆れてただ打ち寄せる波を見るようにする
憂鬱に眺めた虚無の区画はぬらぬらとしたワカメに覆われ、猫は狂ったように利益に目の色を変え、私は22匹目の羊の後ろ姿を追い続け、海は波を寄せ続け、ワカメを岸に運び続ける。
風景というのはもう少し穏やかで、世俗から切り離されているものと思っていた、もしかしたらあまりになだらかで期待や変化のない世界に結局反発しているのはこの私なのかもしれない
悪夢のようなワカメのオールオーバーな平面にうなされて私はベッドから身体を起こし、水を一杯水道から飲み、また羊を数え始める
こんな絵は描くべきではないだろう、恐らく