ドローイング_猫

まぁ、

それは合理的で機能的で文句なく美しい。

このような価値観が間違いないと思いながら、こうやって言葉に起こしていくと、なにかそこに従うことはイージーな選択のような気がしてくるのだ、拗れている

例えばなにかを伝えるにしてもクリーンな文法を使えれば伝達のロスは少なく、そこには潔癖な美しさは感じられる。というか物事がかくあるべき位置に収まる美しさだ

だけどなぁ

だけどなぁなんだよ、ほんとうに

いいのかなぁ、いや、そりゃあいいのはわかっているんだけどなぁ…

察してなのかなんなのかわかりません。猫は食べかけのパスタの皿をぶち撒けた、それで、ぶち撒けたパスタ皿を蹴り飛ばし、当たった先の俺のダウンジャケットでズタズタに爪とぎをして、なんでか普通に俺のタオルを取ってシャワー浴びに風呂に入っていった

水浴び嫌いじゃなかったのかよ

真面目くさって合理的なことばっかいった腹いせだ、職場にアンチョビとオイスターソースを50リットルくらいぶちまけてやる、20年くらい魚介の匂いがこびりついて、出汁が豊潤でモンドセレクション、あぁ絶対旨い、未来永劫数千年のアミノ酸、こびり付いたそのエアコンから溢れ出る全身の喜びと喝采

いや、こんなもんで許すわけにはいかん、冷凍オキアミの戻し汁が直射日光で40度に温まった発酵汁を体いっぱいに浴びて、気持ちはリゾートアイランドの魚河岸の公衆トイレ、猫は身体中の毛をピンク色の汁でベタベタに蠢きながら歓喜の声を上げた

シャワー浴びてこよう

旨みが足りない。合理的で旨味のある世界、豊潤なスープ、最高級の黄金色のスープ

滋養と必然のスープ