ドローイング_猫

用途の定まっているところに風景は見いだしづらい。その風景という片隅に、猫は佇んでいた、そしてこちらをじっと見つめている、目を離す気は無い。

それに気がついてしまったのだ、私は

しばらく私は猫と対峙していた。こいつもその用途の無い風景の一部として見えるくらいに長く。

ふと、見ている私が用途の、理由の無さに侵食されていることに気がついた、此奴は私から理由を奪おうとしているのかもしれない、しかし表情などには変化がない。

この時間がなにかとてつもなく危険なことに思えて、猫に喋りかけようとする。

口は動かない

猫よ、お前には確かに理由のない空間は居心地がいいものなのかもしれない、けれど、お前は蝕まれないのか、お前に理由はないのか

理由に身を委ねる、それはそれでいいだろう、健常だ。俺は仮構だからな、フィクションだ、お前みたいな世界への期待などいらない、そしてこの意識の断絶した離島のような空間を渡り歩くのだ、風景というのはそういうものだ、それは確かに健常な世界の認識からは少しだけズレた場所なのかもしれないな、俺を見ることも含めて、いや、見るというほど能動的ではないか、、眺めるという言葉のほうが風景には相応しい、まぁそれはいい。ただ勘違いするなよ、お前が蝕まれると言ったそれをこちらのせいにするんじゃないぞ、それに気がついたのはお前だ、お前が自ら風景を見いだしたんだ

それにそもそも俺はお前の猫だ

私は口走る